日本製鉄が大幅な赤字と、呉製鉄所(広島)の閉鎖、リストラを発表しました。
◆日本製鉄、過去最大の最終赤字4400億円 呉は23年閉鎖(日経新聞)2020年2月7日より
兵庫県姫路市にある広畑製鉄所は、今後どうなるのか、電磁鋼板・電気炉の設備投資や、リストラする部分など、決算資料の該当箇所を調べて、まとめてみました。
※広畑製鉄所は、瀬戸内製鉄所広畑地区に改称となっています。
日本製鉄広畑製鉄所は今後どうなる?
【会社概要】 ※日本製鉄HPより
商号 | 日本製鉄株式会社 |
本社 | 東京都千代田区丸の内2-6-1 |
従業員数 | 105,796名(連結、2019年3月31日現在) |
事業内容 | 製鉄、エンジニアリング、ケミカル・マテリアル、システムソリューションの各事業 |
売上高 | 6兆1779億円(連結、2019年3月期) |
日本製鉄は、国内首位、世界3位の鉄鋼メーカーです。2012年に住金と合併し発足しました。
2020年2月の決算発表では、大幅な赤字と生産設備の削減を発表し、話題になっています。
また、2019年2月には、姫路市に本社を置く山陽特殊製鋼を子会社にしています。
- 山陽特殊製鋼と日本製鉄の関係を調べてみた!子会社化で人事はどうなる?今後は?
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広畑製鉄所(兵庫県姫路市)の歴史
兵庫県姫路市には日本製鉄の生産拠点「広畑製鉄所」があります。
住所: 兵庫県姫路市広畑区富士町1番地
広畑製鉄所では1303人が働いています。(2019年3月末※有価証券報告書より)
【広畑製鉄所の歴史】
1950年 富士製鐵株式会社発足
1970年 新日本製鐵株式会社発足
2012年 新日鉄住金㈱発足
2019年 日本製鉄㈱に商号変更
広畑製鉄所では、高機能商品、高級薄板商品を製造。熱延鋼板、床用鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、ブリキ、ローモ、電磁鋼板などを製造しています。
※ 日本製鉄広畑製鉄所HPより
電磁鋼板の生産設備に投資
日本製鉄の決算説明資料によると、広畑製鉄所においては、需要の成長が見込める、電気自動車向けの薄型鋼板などの生産設備に投資が行われます。
電磁鋼板 能⼒・品質向上対策投資
2019年度2Q説明資料p9より
電⼒向け・⾃動⾞向け需要の成⻑と効率化ニーズの高まりに対応する設備投資を推進。
⼋幡製鉄所での設備投資(約460億円 2019.8.1公表)に続き、第2弾として、広畑製鉄所への 設備投資(約140億円)を決定。
今後更なる設備投資を継続検討し、順次公表予定。
電磁鋼板は、自動車のモーターや発電所の変圧器などの基幹部材に使われます。
電気炉(電炉)の新設
さらに広畑製鉄所では、電気炉の新設で、鉄スクラップから鉄をつくる、溶解の工程を刷新します。
広畑製鉄所 冷鉄源溶解プロセス刷新
2019年度2Q決算説明資料p9より
現⾏の溶解炉-転炉による冷鉄源溶解プロセスを、エネルギー効率に優れ、よりフレキシブルな生産が可能な電気炉プロセスに刷新。
投資額約280億円。2022年度上期⽴上げ予定。
最新式電気炉で、当社の強みである精錬技術と、高炉由来の高品位原料を活かし、電磁鋼板をはじめとした高純度で高品質な薄板のハイグレード商品を製造。
広畑製鉄所では、電磁鋼板の製造設備と合わせ、合計約420億円の設備投資が行われます。
これらの設備投資で、冷鉄源溶解プロセスの刷新と、電磁鋼板能⼒・品質向上対策とを合わせて実⾏し、 一貫製造体制を強化、競争⼒向上を図ります。
電気炉新設の立ち上げ予定時期(電気炉稼働)については、2022年度上期となっています。
同時に、広畑製鉄所においては、現状の溶解炉休止を発表しています。
冷鉄源溶解炉(SMP)・転炉休⽌時期は、2023年上期目途となっています。
リストラ・構造改革でブリキは休止
広畑製鉄所のブリキ製造ラインは休⽌となり、八幡・名古屋に集約されます。
ブリキ事業体質強化
2019年度2Q決算説明資料p12より
広畑製鉄所のブリキ製造ライン休止を決定。
⼋幡・名古屋の2ミルへの生産集約。
ブリキラインの休止は、2021年下期中 ⇒ 2020年度末目途に、休止時期が前倒しされています。
※ 詳細な生産設備構造対策は2019年度3Q決算説明資料p48へ
日本製鉄 瀬戸内製鉄所広畑地区に改称
日本製鉄では、製鉄所組織の統合・再編成が実施されています。
現行組織のなかで、広畑製鉄所、日鉄日新製鋼(呉製鉄所※閉鎖・堺製造所・東予製造所・大阪製造所)が、2020年4月1日から「瀬戸内製鉄所」になります。
そして、日本製鉄広畑製鉄所は「日本製鉄瀬戸内製鉄所広畑地区」に名前が改称されます。
※ 2019年度3Q決算説明資料p25より
広畑あおぞら保育園で福利厚生も
日本製鉄では、就労支援施策として、自社保育園を開園し、職場環境の整備を推進しています。
◆日本製鉄、24時間対応が可能な自社保育所「広畑あおぞら保育園」を開園(日本経済新聞)2019年4月1日より
広畑あおぞら保育園では今後、日本製鉄で交替勤務社員の利用が始まる時点で、24時間保育を開始します。
電気自動車用の高級鋼板へ投資
日本製鉄広畑製鉄所では、電気自動車用などに使われる高級鋼板の生産設備に投資が行われます。
同時に、需給に対応してブリキなどの生産設備が休止されることになります。
さて、自動車産業の部品供給メーカーにおいては、電気自動車へのシフトが進みつつあります。
姫路市においても、パナソニック姫路工場が車載用電池の生産を始めたり、三菱電機姫路製作所が自動車機器の生産を拡大したりしています。
電気自動車の市場が成長するのにともない、姫路の工場に設備投資が増えていることは、経済に良い影響があると思います。
瀬戸内製鉄所広畑地区に、さらなる投資が進むことを、期待したいと思います。