都市経済学について書かれた本、『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』を紹介します。
アメリカの都市について書かれた本ですが、日本にも地域経済を考える場合に、あてはまる部分が多くあるので、書評と要約をまとめてみました。
年収は住むところで決まる
本書は、カリフォルニア大学バークレイ校のエンリコ・モレッティ教授が書かれた、「THE NEW GEOGRAPHY OF JOBS」という著書を、日本語に訳して出版された本です。
『年収は「住むところ」できまる』という、キャッチ―な日本語のタイトルになっていますが、読んでみると、雇用とイノベーションについて書かれた、都市経済学の内容になっていて、事例とデータを交えながら分かりやすく解説してあります。
雇用とイノベーションの都市経済学
事例のひとつに、アメリカのシアトルにおいての都市の変遷で、閑散な工業都市が、どのように最先端のIT産業の集積地になり、街全体が変わっていったのかということが、都市経済の視点から解かれています。
さっくり仕組みを要約すると、
最先端のイノベーティブな産業が街に集積する
↓
最先端の産業は利益率が高く儲かっている
↓
給料が高い人がたくさん集まる
↓
会社も社員も、たくさんお金を持っている
↓
周辺の産業や、末端のサービス産業まで儲かる
という流れが、都市の経済を活性化させ、街を変えるということです。
このことから、同じ職種(不動産業、弁護士、美容師、ヨガのインストラクターなど)で働いていても、住んでいる都市によって収入が違うということが、本書のタイトルにもなっています。
年収は住む場所で変わるという結論
アメリカの都市の事例なので、職を求めて自由に移住するということが、前提にはなっている感じがしますが、日本の都市においても、新しい産業と雇用の関係など、基本的な考え方は同じです。
本書では地域が活性化していく様子を、経済学の視点で考えると同時に、移住や変化への対応、人的資源の大切さなどについても解かれているので、地域の活性化を考えるにあっては、参考になる本だと思います。
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